ピアニスト、ベートーベン・フェスティバルの聴衆を沸かせる

By テリー・リンドフライシュ、ラ・クロス トリビューン誌
trindfleisch@lacrossetribune.com
2010年6月30日

ベートーベンは、ピアニスト、クレイグ・シェパードに惚れ込んだに違いない。 ミネソタ・ベートーベン・フェスティバルの火曜の夜、ベートーベンの2作品がシェパードによって披露された。ベートーベンの弾き方を熟知しているピアニストの演奏を聴けるのは感動の極みである。

アメリカで最高のピアニストの一人と評されるシェパードの「ディアベリ変奏曲」は、演奏、解釈ともに素晴らしいものであった。シンプルで決して特別ではない30以上の主題に要求される、幅広いテクニックの隅々に、彼の卓越した音楽の才能が散りばめられていた。この変奏曲が聴けることはめったにないが、シェパードはこれを見事に完成させライブ録音を行っている。同時に、これはかなりの難曲ともいえるが、チケット完売となったウィノナ・コッター・ハイスクールの聖セシリア・シアターで、シェパードはこれを生き生きと蘇らせ、聴衆を楽しませてくれた。コンサートの全後半を占めたベートーベン変奏曲は、要求度の極めて高い当コンサートの締めくくりに相応しく、シェパードに与えられたスタンディング・オベーションは、正に受けるに値する演奏であったといえる。クラッシック音楽の世界で40年以上にわたり、力強く揺るぎない存在を維持し続けるシェパードによる、ベートーベンが最も愛した「ワルトシュタイン」ソナタは素晴らしいとしか表現しようのない演奏であった。感情に溢れ、心を奪われるようなオープニングの楽章が終わった途端、聴衆は熱狂的な拍手を送り、続く2楽章はベートーベンが残した最高の作品を更に上回る素晴らしさ。シェパードによる演奏は喜びと優雅さに溢れていた。

当ベートーベン・フェスティバルの芸術監督兼運営責任者であるネッド・カーク氏は、ワシントン州立大学時代に、シェパードから指導を受けている。シェパードによってピアノの弾き方が変わった、とカーク氏は言う。きっとシェパードは、ベートーベンを美しく満足のいく何かに変えたのであろう。シェパードの演奏はバッハのパルティータで始まったが、それは新鮮かつ晴朗で、魂を和らげる様々なスタイルを披露してくれた。バッハの「パルティータ第2番ハ短調」はまさに、後に続くベートーベンへの熱いセッティングとなった。

この日はピアノと音楽の素晴らしい夜となった。ヨーヨー・マとシェパードによって、2010年のフェスティバルはセンセーショナルなスタートを切ったと言える。

翻訳:中田由紀子